観葉植物
与太郎の妄想独り言

2017-08

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

うつくしいかおり、のぞむはる その12

4月第3週 その2


水曜日。
朝、いつも通りに教室に入ると珍しい物が目に入ってきた。
時雨・春香・菊地さんの三人が、如月さんの周りに集まっていた。
如月さんは大抵の場合、予鈴ギリギリに教室に入ってくる。
だからこの時間に席に付いてるのは初めて見た。
「おはよう」
とりあえず挨拶だけして通り過ぎようとしたら、
「あ、おはよう。ねぇ高志クンも一緒に、お昼誘うの手伝ってよ」
春香に呼び止められた。
「いや、俺は止しておくよ」
春香の言葉に一瞬嫌な顔をした如月さんが、チラリと俺を見た。




「なんでだよ、手伝ってくれたっていいだろ?」
時雨にまで言われた。
相当手を焼いているらしい。
「たった一人に大勢で寄ってたかって、警察の尋問じゃないんだぞ?」
「ひどーい!それじゃまるで私達が千早ちゃんを苛めてるみたいじゃない」
「俺まで加わったら、正にそうなる気がするってだけ」
「う?ん、言われてみると確かにそうかもしれない」
菊地さんは何とか同意してくれた。
春香と時雨はまだブツブツ言っている。
「数に物を言わせて無理につき合わせても、逆に溝が深くなるだけだと思うけど?」
「言ってることは分かるけどよ・・・」
「気持ちは分かるけど、焦ってもいい結果は出ないって」
時雨をなだめて席に向かおうとしたところを、呼び止められた。
「アナタも真達の友達なのね」
声を掛けてきたのはよりにもよって、如月さんだった。
ちょっと面食らいながら応えた。
「そうだけど、それが?」
「じゃぁアナタから真達に言ってくれないかしら?私に構うのは止めるように」
俺達の目的とは正反対の頼み事をされた。
「どうして俺が」
「迷惑なのよ。アナタはまだ分別があるようだし、アナタからも言ってもらえないかしら?」
「・・・それは聞けないな」
「何故?アナタの友達が人に迷惑を掛けてるのに、見て見ぬ振りをするというの?」
言葉の端々に、小さいけれど鋭いトゲがある。
「三人とも嫌がらせをしてるわけじゃない。純粋に如月さんと友達になりたいだけだろ」
「私にはそんなつもりはないわ」
こちらが出した手を、見もしないで払われた気分だ。
「何故?」
だから、簡潔に一言だけで聞き返した。
「迷惑だからよ」
「それは理由じゃなくて結果だろ?何が迷惑なのか納得できる理由を教えてくれなきゃ。
 納得できればそこの三人だって素直に言う事も聞けるんじゃないのかな」
「私は友達なんて欲しくない。それが理由よ」
「それじゃ余計に聞く気にならないな」
如月さんが睨みつけてきたが、気にせず続ける。
「他人と関わらずに生きて行きたいなら、何で学校になんか来てるのさ?
 それこそ誰も来ないような山奥にでも篭って、自給自足の生活でもしてりゃいいんだ。
 でも現実にはそんな事は不可能だろ?だったら最低限でも、人間関係は築かなきゃ生きてなんて行けやしない。誰とも関わりを持たずに生きていけるほど、社会は甘くなんてないはずだから。
 どんな理由で他人との関係を拒んでるかなんて知らないけど、せっかく差し伸べた手を無碍に払うのはどうかと思うけどな。みんなだって、最低限の会話だけでも相手してやれば随分大人しくなると思うけど」
ちょっと言いすぎかとも思ったけど、敢えてキツメの言い方をしてみた。
如月さんの反応によっては謝らなきゃならないかも、と思ったけど要らぬ心配だった。
「アナタに私の何が解るの?何も知らないくせに」
「当たり前だろ。いま初めて喋ったのに何が解るもんか。理解して欲しかったら話してくれなきゃ」
最初からマトモに相手をするつもりも無いようだし、優しくすると逆に付け込んでくるタイプだ。
言うべきところはしっかり言っておかないと、逆にここで線が切れてしまう。そんな気がした。
「こっちは聞く耳を持って待ってるんだからさ。少しはこっちの話にも耳を傾けてもらいたいもんだね」
言い終わるが早いか、席を立った如月さんは
「そんなつもりは無いわ」
とだけ言ってそのまま教室から出て行ってしまった。
「ゴメン」
呆然と立ち尽くす三人に、俺はそれしか言えなかった。
今日の昼飯は、三人からの非難ごうごうだな。

昼休み。
案の定、如月さんは早々に教室から出て行ってしまって声も掛けられなかった。
いつもの様に昼飯の用意をしていると、まず時雨が文句を付けてきた。
「まったく。ランチに誘う手伝いを頼んだはずだったんだけどなぁ」
「分かってるよ。これでも本当に悪かったと思ってるんだから」
時雨に向かって軽く両手を合わせて頭を下げてみせる。
春香と菊地さんにも同じ仕草をしながら、一言ずつ謝っておいた。
「ホントしっかりしてよね。これでも高志クンには期待してたんだから」
「面目ない」
「けど、双海ってスゴイね」
何だか心底感心したような口ぶりの菊地さん。
「すごいって、何が?」
だからつい聞き返してしまった。
「千早が言い返せなかったの初めて見たから。今まではみんな千早に言い負かされて、マトモに反論もできなかったんだよ」
「なんだ、またやったのか?」
口を挟んできたのは進だ。
「どうもそうらしい」
「オマエは自覚無しでやるから、余計にタチが悪いんだよな」
「何の話だよ?双海が何かやらかしたって言うのか?」
「高峰クン、高志クンと千早ちゃんの会話聞こえてたの?」
時雨と春香がほぼ同時に進に質問した。
「いや、流石に聞こえなかった」
迷う事無く春香に向かって答えてから、時雨に向き直る。
「でも何をやったかは大体分かる。俺も経験あるからな」
「どういうこと、それ?」
質問してきた菊地さんを軽く見てから、その場の全員に向かって言った。
「大方、如月の正論に返す刀で理路整然と反論したんだろ」
萩原さん以外は、ポカンと口を開けたまま止まっている。
ただ一人、口元に人差し指を当てて天井を仰いでいた萩原さんが、
「それって、如月さんの言葉尻に、反論の余地の無い正答で返した、ってこと?」
小首をかしげながら言った。
「その通り」
「いや、さっぱり分からないんだけど」
時雨が進に突っ込んでいる間、春香は難しい顔で一所懸命に理解しようと考えているようだ。
説明は俺がすることにした。
「俺思うんだけどさ、正論ってヤツは誰が聞いても納得しちゃうけど、実は間違ってないだけで正しくは無いんじゃないか?だから相手の言葉をちゃんと理解すると、絶対に反論の余地があるもんなんだよ。今朝の如月さんみたいにさ」
「そっか。高峰クンも同じ事された事があるんだ」
春香の問い掛けに、ウンザリとした口調で答える進。
「高志はそれを無意識でやるもんだからな、俺も昔はへこまされたよ。」
「それって揚げ足取りって言わないか?」
「あと屁理屈とも言われるかな」
時雨に詰め寄られたけど、これも俺にはいつもの事だ。
だから言われた事のある台詞でさらっと返しておく。
「イヤなヤツだな。友達無くすぞ」
「『じあめ君』に言われるまでもなく、友達は少ないですよ」
軽口は叩いておくけど、
「それでも、顔色を伺いあうだけの上っ面だけの友達なら、俺はいらないんだ」
これだけははっきり言っておきたい。
そうでなければ、進と友達ではいられなかった。
お互いが認め合わなきゃ、あんな会話はできやしない。
「菊地さんだって、だからこそ中学の三年間で友達になれなかった如月さんを見捨てなかったんじゃないの?」
理由は分からない。
けど菊地さんは菊地さんで、如月さんに対して何か感じる物があるんじゃないかと思った。
例え時間が掛かっても、きっと友達になれると信じられる何かを。
「・・・うん。千早さ、ホントにたまになんだけど、すごく寂しそうな表情をする時があるんだ」
「寂しそう・・・、例えば、どんな時?」
萩原さんは如月さんの席に眼をやると、菊地さんに聞いた。
「私も二・三度見たことがあるだけだから。一人で佇んでる時に、そんな表情をしてたことがあったってだけで」
「そっかぁ。その理由が分かれば、何かのきっかけになるかな」
「それはどうかな」
時雨の言葉に、進が反論する。
「逆かもしれないぞ。もしかしたらトラウマみたいな物で、ヘタに触れるとかえって頑なになるかもな」
「じゃあ、どうしたらいいんだよ!?」
「まぁ、焦りは禁物って所じゃないのか?」
「お前が言うな!」
俺の一言に、時雨が激しいツッコミを入れてきた。
「今朝全部ぶち壊しにしたのは誰だよ!?」
「あ、俺か?」
「他に誰が居るんだよ!」
「いや、案外その方がいいのかもしれないな」
進が割って入ってきた。
「頑なな人間に喋らせるには、怒らせるのが一番手っ取り早いからな」
「それって高峰クンの経験談?」
「・・・否定はしないけど」
春香の言葉に答えながら、俺の方を見る進。
その目線は冷たい。
「確かに。言われて見ると、今まで千早に強い調子で話しかけたのって誰もいないかもしれない」
顎に手を当てて、菊地さんはそう言った。
「おいおい、ちょっと待てよ。まさか双海に如月さんと喧嘩させるつもりか?」
慌てたように時雨が聞いてくる。
「まさか。いくらなんでも誰もそこまで言ってないわよ」
「だよな。脅かさないでくれよ」
春香のフォローに時雨は胸をなでおろした。
それをぶち壊すように、進が言った。
「俺はその方がいいような気もするけどな」
「おい高峰、さっきは如月さんの逆鱗に触れるのがどうとか言ってたんじゃなかったか?」
「逆鱗に触れるのと神経を逆なでるのは、意味が違うんだけど?」
時雨の突っ込みに、進はあっさりと答える。
「高志は後者の天才だからな」
「・・・あからさまに馬鹿にしやがったな」
言われっぱなしも癪だから、一応文句は言っておいた。
否定はできないけど。
「お前ら本気かよ!?」
「さすがに自分から喧嘩を売るつもりはないよ。売られたら買うかもしれないけど、向こうもそんなつもりはないみたいだし」
本気で焦る時雨に、フォローは入れておく。
如月さんにしてみれば、最初から相手にするつもりもないだろうし。
「それでも売られたら買うのか」
「『買うかもしれない』って言ったはずだけど」
「お前、なるべく如月さんに近づくなよ」
静かな声で時雨は言った。
刺すような、視線で。
「あぁ、分かってるよ」
「ちょっと、ここで二人が喧嘩してどうするの?」
春香がたまらず、声を掛けてきた。
「千早ちゃんと友達になる前に、二人の仲直りが先?」
「あぁ、ゴメンゴメン。そんなつもりじゃないんだ」
いつもの調子で謝りながら、でも机に視線を落として時雨は言った。
「でもそんなやり方、俺は認めない」
「悪かったな、余計な事を言って」
進が時雨に謝る。
「別に高志をたきつけるつもりじゃなかったんだが、言い過ぎたようだ」
「え?いや・・・まぁ、俺もちょっと意固地になってたかもしれないし」
最近は、見たことのない進を見る機会が本当に増えた。
いい傾向だと思う。
以前の進なら、こんな風に謝るなんて考えられなかった。
「ただアプローチの一つとして、そう言う方向もあるって事は頭に入れておいてくれ」
「・・・・・・・・・。」
時雨は答えない。
視線を落としたまま黙り込んでしまった。
「そうならないように、私達でフォローしていこうよ」
菊地さんが話しかけた。
「雪歩ももちろん手伝ってくれるよね?」
「え?あの・・・・・・うん。私にできることなら」
菊池さんに話を振られて一瞬困りながら、それでも時雨の様子を見て萩原さんも答える。
「双海と千早が喧嘩する前に友達になっちゃえばいいだけなんだから。そうでしょ?」
「そうだよな・・・。うん、絶対に喧嘩なんかさせねぇからな」
やっといつもの調子に戻った。
それを見て、春香もいつもの調子で時雨をたきつける。
「そうそう、その調子その調子♪」
「よし!また明日の朝からアタックして、一日でも早く友達になってやる!」
時雨の言葉に、俺が軽口を叩く。
「そうなってもらえると、俺も余計な負担が掛からなくて楽なんだけど」
しかし時雨は一瞬俺を睨むと、視線を逸らして俺を見なくなった。
スポンサーサイト

● COMMENT FORM ●


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://yota323.blog63.fc2.com/tb.php/66-6dec664d
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

NEW ENTRY «  | BLOG TOP |  » OLD ENTRY

プロフィール

よた

Author:よた
色々と残念な親父です。

でも人生楽しんでます。

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (5)
ご挨拶 (9)
SS (16)
ニコマス (125)
ニコニコ動画 (17)
はるるん (30)
雑記 (28)
携帯 (2)
美希 (27)
iM@S SP (2)
VOCALOID (34)
ネタ (3)
雪歩 (9)
MikuMikuDance (45)
写真 (10)
JAXA (13)
UTAU (4)
アイマス2 (5)
重音テト (2)

フリーエリア


My List
by yota39

FC2カウンター

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。