観葉植物
与太郎の妄想独り言

2017-06

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うつくしいかおり、のぞむはる その11

4月第3週 その1?2


「そういえば」
なんとなく話が途切れたところで、春香が切り出した。
「この前から聞こうと思ってたんだけど、高峰クンって何時も何か書き物してるけど、あれって何を書いてるの?」
「お、それは俺も気になってた。いつも聞こうとして忘れるんだけどな」
時雨が話に乗ってきた。
「・・・大体予想は付いてるんじゃないのか?」
進が答えると、
「やっぱり、小説、とか?」
反応したのは萩原さんだった。


「そう。とは言っても、アイディアだけぶつ切りに書き溜めてるみたいなもんで、一本の話としては完成してないけどな」
俺と時雨、それに菊地さんの三人は予想外のところからの反応に驚いていた。
ところが春香は特に反応も見せず、進に至っては当たり前と言わんばかりに普通に反応している。
「すごいね。よかったら、今度読ませてもらえないかな?」
「今も言った通り、物語として完成してないけど?」
「やっぱり、迷惑だった?」
「いや、それでも構わないなら今度古いヤツから持ってくる」
なんだか進と萩原さんの二人だけで会話が完結しちゃってて入り込めなくなってる。
春香だけはそんな二人を、ニコニコ笑顔で見ている。
・・・見てるのは二人じゃなくて、萩原さんだけ、かな?
「い、いいの?見せてもらっても」
「あぁ。どっちかって言うとお願いしたい。やっぱり読んだ感想や批判には興味あるし。相手が同じ『物書き』なら、特にな」
「あ、やっぱり気付いてたんだ?」
驚いてる萩原さんを尻目に、春香が声を掛けた。
それも予想通りのように、進が答える。
「同じ物書きとしてはな。ただ萩原が書いてるのは俺みたいな物語とは違うんだろうけど。
 書き方を見てる分には、詩かな?」
「流石。ホラ雪歩、高峰クンに見せてあげなさいよ」
肘で萩原さんの脇の辺りを小突きながら急かす春香。
萩原さんは口元に両手を寄せて、顔を真っ赤にしながら慌てている。
「わ、私の書いた物なんて、人に見せられるようなものじゃないから」
「そうか?せっかく書いたんだから、誰かに読んでもらった方がいいと思うけど」
「でも、やっぱり恥ずかしいし・・・」
「無理にとは言わないけど、勿体無くないか?」
「もったい、ない?」
「せっかく書いてるんだろ?それって誰かに見てもらいたいからじゃないのか?」
「・・・・・・」
「俺は自分が書いたものは誰かに見てもらいたい。今は未完成だから俺から見せる事はしないけど、完成したらweb公開でも何でもして、とにかく誰かに読んでもらうつもりだ。どんな反応が返ってくるか知りたいから」
「萩原さんも困ってるみたいだし、その辺にしとけよ」
二人の間に時雨が割って入った。
進の言葉に俯いたままの萩原さんに、助け舟を出したいんだろう。
「そこまでして見たいものなのか?」
「そうは言ってない。逆に聞くけど、お前は自分が撮った写真を誰かに見てもらいたくないか?」
進は静かに聞き返した。
「俺は見てもらいたいさ。風景にしてもモデルにしても、その魅力を少しでも伝えたいからな」
「流石だな」
「なんだよ、馬鹿にしてるのか?」
「何故馬鹿にする必要があるんだ?お前の写真への真剣さが理解できるから、流石だと思っただけだ。」
言われた時雨の方が、目を白黒させている。
普段は曖昧な言い方しかしないくせに、真剣な時には愚直なほど真っ直ぐに相手をする。
「今の俺には真似できないからな」
進は真っ直ぐに時雨を見ながら言った。
何のことだか分からない風に聞き返す。
「どう言う事だよ?何が真似できないんだ」
「俺は見る人に伝えたい事があって書いてるんじゃない。」
「いいのか?」
俺は口を挟んだ。
「何が?こいつ相手に隠す事もない」
「そうか」
進が何を言おうとしてるのか、俺は知ってる。
ただ自分から喋るなんて、今までなかった。
「一体なんなんだよ?」
痺れを切らしたように時雨が聞いてくる。
進が口を開いた。
「俺は、俺の価値を知りたいんだ」
「何だって?」
「俺の書いた物の評価は、そのまま俺の価値そのものなんだ。俺は俺の存在価値が知りたい。」
「なんだよそれ。意味分からねぇよ」
時雨は本当に解らないんだろう。
俺だって本当は、解ってないんじゃないかと思う。
ただ進との付き合いが長いから、解った気でいるだけかも知れない。
「俺は人付き合いが苦手で、ずっと自分の殻に篭ってた。今はこうしてお前たちの輪の中にはいるけど、それでも正直無理をしてる。だから思うんだ。『俺はここにいてもいいのか?』ってな。俺はその答えが欲しい。その方法が、一人で殻に篭ってた時の妄想を物語として書き出すこと。それを『他人』に読ませて評価させる事。ただ一本の話として完成してないから、今まで誰にも見せる機会がなかった。それを逃げ口上にしてた。自分を否定されるのが怖かったから。でも、いつまでもそれじゃダメなんだ。自分から変わらないと。」
そこで一息つくと、萩原さんに視線を移して続けた。
「俺とは違うだろうけど、萩原だって本当は誰かに見てもらいたいんじゃないのか?書いた物を通して自分を知って欲しいんじゃないのか?そう思ったんだ。だから、改めて萩原に頼む。俺の書いた物を読んで、その感想を聞かせて欲しい。頼めるか?」
「・・・私なんかで、いいの、かな?」
「あぁ。萩原が読みたいって言ってくれたからな」
視線を逸らしながら聞いてきた萩原さんに、今まで聞いた事のない優しい口調で答えた。
新しい環境の中で、進なりに変わっていこうとしているようだ。
時雨はバツが悪そうにしていた。
「なんか悪いことしちゃったかな」
「別に。お前は何も悪くないけど。お互い理解しあうのは会話が基本だったんじゃなかったか?」
「・・・そうだな。会話もなしに理解しあえる程、俺も器用じゃなかったんだっけ」
「そんなことも忘れてたのか?それじゃ如月と友達になるなんて不可能だな」
珍しく、進から茶化しに掛かってきた。
「くっ!ちくしょう、見てやがれ。その鼻明かしてやるからな!」
「出来るもんならな」
この辺の空気の読み方は時雨はうまい。
見事に場の空気を軽く仕上げる。
それに軽口で返した進には驚いたけど。
「雪歩、いいの?」
俯いたままの萩原さんに春香が声をかけた。
そこに、
「いいんだよ、天海」
進が間に入った。
「読んで感想を聞かせて欲しいのは俺のわがままだし。無理をして俺のペースに合わせる必要もない。時雨が言ってたけど、俺も慌ててる訳じゃない。萩原自身のペースでいいんだよ。」
「・・・ごめんなさい」
「謝る必要なんてどこにもない。ゆっくりでいい。ちゃんと待ってるから」
信じられないものを見た。
あの進が他人、それも女の子を気遣って優しい言葉をかけている。
謝る萩原さんに声をかけた進の顔は、初めて見る優しい表情だった。
「おい双海。どうしたんだ?口から魂が流れ出たような顔して」
「・・・え?あっいや、なんでもない」
時雨に声を掛けられて、我に帰った。
気が付くと進以外全員が、俺の顔を覗き込んでいた。
「本当にどうしたの?調子が悪いんだったら保健室に行く?」
菊地さんが本気で心配していた。
「ホントに大丈夫だって。あまりの真面目な空気に耐えられなくて、現実逃避してただけだから」
だから適当なことを言って、お茶を濁す事にした。
ワザと見ないようにしたけど、目の端にバツ悪そうに顔を逸らした進が映る。
アイツも、らしくないことをした自覚はあるようだ。
「現実逃避だぁ?まさかお前、幽体離脱でもして例の美希ちゃんのところにでも行ってたんじゃないだろうな?」
「何だじあめ、お前そんなこと出来るのか?今度やり方教えろよ」
「知ってたら俺のほうがやりてぇよ!」
「おや?お前さんの当面の目標は、如月さんと仲良くなる事じゃなかったっけ?」
「うっ、そうだった。・・・そうだ、今度は萩原さんも一緒に来てくれよ」
「え?わ、私がですか?」
時雨と軽口を叩いたのは、正解だったようだ。
「どうも俺達だけじゃ如月さんに五月蝿がられそうで。萩原さんが一緒なら、いい感じのクッションになってくれそうだし」
「ちょっと。それって私がガサツだって言いたいの?」
菊地さんがいい感じのツッコミを入れてきた。
「いや!そうじゃなくて!あまり押せ押せばっかりじゃ如月さんだって引く一方じゃないかなって」
「ふーん。つまり時雨クンは私が一緒だと千早ちゃんに逃げられちゃうって言いたいんだ」
蔑むような冷たい視線を向ける春香。
怖いよ、その目。
「あぁっ!ち、違うって!そう言う意味じゃなくて!」
「時雨クンは私達が一緒だと、千早ちゃんと仲良くなれなって言いたいんだね?真ちゃん、ひどいと思わない?」
「そうみたいだね。じゃ春香、明日は雪歩と三人で話しかけに行こうよ」
「わ、私なんかが一緒に行っても、役に立たないよ」
「大丈夫。時雨クンなんかよりも、よっぽど役に立つから」
「その通り。この上時雨と一緒じゃ、千早に余計に引かれちゃうから」
「ちょっと待ってくれよ!」
「じあめくん」
ニヤニヤとした顔で俺は時雨に声を掛けてやる。
一瞬ビクッとして、ゆっくりと俺の顔を見る。
「自業自得だ。明日はお前の出番はないよ」
まだ何か言いたそうな時雨に、進がダメを押した。
「諦めろ」
それを聞いてそのまま机に力なく突っ伏した。
春香と菊地さんが時雨を見て笑い出す。
萩原さんもそれを見てやっと笑顔になる。
重くなっていた空気が、軽やかになる。
結局みんなも、息苦しかったんだろう。
真面目な話が嫌なわけじゃない。
ただ、場の雰囲気が悪くなりそうだったのを元に戻したかっただけ。
出会ってから一週間程度しか経っていないのが嘘のように、みんなの歯車が綺麗に噛み合った。
コレだけの友達と出会えた事は、もしかしたら奇跡かもしれない。
この出会いをこれからも大切にしていきたいと、心から思った。
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