観葉植物
与太郎の妄想独り言

2017-08

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

うつくしいかおり、のぞむはる その9

4月第2週 その2?3

食事の間中、美希と春香はずっと楽しそうにおしゃべりをしている。
テレビの話題、音楽の趣味、服や雑貨なんかのオシャレの事、お互いの学校の話。
正直俺にはついていけない話題がほとんどなんだけど。
お互いに今まで周りにいないタイプだったらしくて、普通の会話が全て新鮮なようだ。
二人共本当に楽しそうで、見てるだけでこっちまで楽しくなってくる。




食事が終わってデザートが来たところで、俺と美希の目が丸くなる。
春香は分かっていて、その反応を楽しんでいるようだった。
「これがデザート・・・?」
美希はその一言を言うのが精一杯のようだった。
「今時珍しい、何の飾りもないケーキだね」
デザートに選べるケーキは3種類。
美希はチョコレート、俺はチーズ、春香はショート。
コレが何の飾りも乗ってない、よく言えば素朴なケーキだった。
「ふっふ?ん。とにかく食べてみてよ」
春香が悪戯っぽく言った。
何か企んでるんじゃないか、と良からぬ考えが頭をよぎった。
とにかく一口食べてみる。
「・・・うまい」
「おいしー!」
「でしょ?私このお店で一番の楽しみがこのケーキなの」
なんとも見た目通りと言うか、素朴な味だけど本当にうまい。
最近流行りの豪華なほどの飾り付けがされたケーキに慣れた舌には、逆に新鮮な感じがする。
「私甘いお菓子が大好きで、それが目当てであちこちのお店を食べ歩きしてるの。
 このお店のケーキは、ランチとディナーのデザートでしか食べられないから余計に知られてない、私の取っておきなのよ」
「へぇ。つまりコレってこの店の手作りってこと?」
「もちろんそうよ。さっき高志クンが自分で言ってたでしょ?今時こんな飾り気のないケーキなんて珍しいって」
「それ!ミキもそれ思ってたの。もっと可愛く飾りつけしたらいいのにって」
「でもそれをしちゃうと、この値段と味の両立はできなくなると思うの」
「なるほどね。手頃な値段でおいしいものが基本で、見た目の華やかさは敢えて押さえてる訳か」
言われて見ればさっきまで食べてた料理も、盛り付けには手は掛けてなかったな。
もちろんうまそうに見えるのは当たり前として。
「それにこの位素朴なケーキってほとんどお目に掛かれないから、逆にこのお店の特徴になってるのよ」
「そっかー。確かにこういう味のケーキってあんまり食べないかも」
「でもうまいのも事実だし、このケーキだけでも飲み物とセットで出せるんじゃないかな」
「たった今美希が言ってたけど、今時こんな素朴なだけのケーキをわざわざ食べに来る子なんて、ほとんどいないわよ。それに、この味は出ないけどこのくらいのケーキなら私でも作れるし」
「えっ!?春香、ケーキなんて作れるの?」
美希が身を乗り出して春香に聞いた。
「うん。甘いお菓子が好きで、自分でも作るようになっちゃったのよ」
「へぇー、すっごーい。ミキ、ケーキやお菓子って買ってくるものだとばかり思ってたの」
「お菓子作りだって料理の一種なんだし、道具と知識さえあれば作れるさ」
「そうよ。でも私はお菓子作りばっかりで、料理は苦手なんだけどね」
言いながら、えへへっと恥ずかしそうに笑った
「また偏ってるなぁ。でも『コレくらいなら作れる』のに、なんでわざわざ食べに来るの?自分で作っちゃったほうが安上がりだったりしない?」
ふと疑問に思ったんで、聞いてみる。
「それも言ったじゃない、『この味は出ない』って。手作りの物ってレシピや作り方が分かっても同じ味にならないものなの。一応挑戦した事もあるけど、どんなに頑張ってもこの味は再現できなかったの」
そう言えばあずさ姉さんも同じような事言ってたっけ。
母さんと一緒に料理してるのに、同じ味にならないって。
特に『玉子焼き』は直接教えてもらって、どんなに頑張ってもあの味が再現できないらしいし。
「それともうひとつ」
「「?」」
美希と揃って春香を見る。
「この手のケーキって、一人分って言う作り方は出来ないのよ。『ホール』って言う大きなケーキを人数分にカットしたものだから。いくら好きでもそんなに食べれないもの」
「よく分からないけど、それって小さく作ることってできないの?」
美希の質問は俺も思ったことだった。
分量を調整して、器もそれに合わせたサイズのものにしたら・・・。
「そう言う作り方もあるけど、味が別物になっちゃうの。私も最初の頃はそう思ってやってみたこともあるのよ。でも小さく作ると、大きく作ったときと味が全然違っちゃうから不思議なのよ」
「へぇ?、なんか思ってるよりも奥が深いものなんだな」
手元のケーキをしげしげと眺めながら呟いた。
料理って手間はかかっても、もっと単純な物だって勝手に思い込んでた。
「何だかすごく難しいんだね。美希、自分で料理とか出来るか不安になってきたかも」
美希も同じように感じたらしい。
やはり手元のケーキを見ながら、複雑な表情をしてる。
「あら、そんな難しくなんかないのよ?」
春香はあっさりと言い放った。
「要は美味しく作ればいいわけだし。別にお店の味を真似る必要も、誰かの味を再現する必要もないんだから。自分が作ったものを美味しいって言って貰えればいいだけのことだもん」
目が点になった。
言われて見れば、確かにその通りのこと。
結果として美味しければ、それ以上でもそれ以下でもない。
「お菓子作りしかできない私が言う事じゃないかも知れないけど」
ペロッと舌を出して、春香が笑う。
「そっかぁ。・・・ミキももう少しお料理教えてもらおっかな」
なんだか妙に納得した口調で美希が呟いた。
「そうそう、その気持ちは大事よ。後は作ったものを『食べてもらう事』ね」
「『食べてもらう』って、自分で食べちゃダメなの?」
「そうじゃなくて。食べてもらう事で『おいしい』って言って貰うことが大事なの。その一言がおいしく作るための基本だもの」
「それってお母さんとか?」
「もちろん、一番身近な人だもんね。でも友達とかでも構わない訳だし、その辺は何を作るかにもよるよね」
「そっか。じゃ今度ミキが料理に挑戦した時は高志クンに、えっと・・・・・・毒見?してもらおっと」
「ちょっ、最初から殺す気満々かよ!?」
そりゃ頼まれればイヤとは言わないけど、『毒見』は勘弁して欲しいぞ。
「そうね、せめて味見になる程度まで腕を上げてからのほうがいいよね」
フォローを入れながらも、春香はケラケラと笑っている。
もちろん美希も毒見なんかさせるつもりなんて無かった訳で、えへへーっといった感じで笑った。
そんな二人を見てワザと大きな頭を振ってみせる。
もちろん、笑顔で。

「あ?楽しかった?!」
「ホント!こんなに楽しかったの凄い久しぶりって感じ」
「確かに楽しかったけど、さすがにちょっと喉が辛いんじゃない?」
時間は夕方の5時をとうに過ぎている。
食事の後、意気投合した美希と春香はいつの間にかカラオケに行く事になっていた。
ノリノリの二人に連れられて行ったカラオケで、結局は俺も大いに楽しんでしまっていた。
まぁ勢いとはいえ、ノリで入ったカラオケで4時間歌えば十分だ、と思っていたけど。
「ナーニ言ってるの!時間があれば私はまだまだ行けるわよ」
「ミキだって、もっと歌いたかったのに」
とか言われてしまった。
実際7割以上を美希と春香が歌っていて、俺は場繋ぎ程度に何曲か歌っただけなんだけど。
放っておくと、朝まで耐久カラオケになりそうだ。
「でも流石にこれ以上遅くなる訳にも行かないよ。なんたって美希はまだ中学生なんだし」
「あっ、そういえばそうだったっけ。なんだかもうそんな感じしなくって」
春香の台詞に、そりゃそうだろうと妙に納得した。
あんなに楽しそうに、仲良くデュエットしてれば。
「ねぇ、どーして中学生だと早く帰らなくちゃいけないのかな?もう子供じゃないんだし、少しくらい・・・」
「その考えが危ないんだよ。楽しい事には際限がないから、ついもう少し、後ちょっとって言って。
 気がつくとすっかり夜も更けてたりしてさ。そうやってけじめが付かなくなるのが、一番良くないんだよ。こう言う時にけじめをつける事も勉強なんだ、ってところかな?」
「う?、でもやっぱりツマンナイかも」
美希の言いたい事は良く分かる。
そりゃ俺だって、楽しくないわけじゃないし。
「でも楽しい事は楽しい内に止めておくと、次が楽しみになるものだし。
 つまらなくなってから止めると、もう二度とやりたくなくなるものだよ」
「そうね。それに今度は私の手作りケーキが待ってるのよ?」
「あっ、そーだった!春香のケーキ食べたい食べたいたーべーたーいー!」
そう言えば歌ってる合間にそんな会話をしてたっけ。
あれだけ歌い通しだったってのに、よく会話が成り立つもんだと感心するよ。
しかし美希、その言い方は亜美と真美がうつったか。
「大丈夫!ちゃんと作ってあげるから。気合を入れてバッチリ豪華なのをね」
「ホント?約束だからね」
「でも本当にいいの?そんな約束してもらっちゃって・・・」
流石にちょっと気になって聞いてみる。
もし勢いだけで約束したのなら、ずいぶんな負担を強いる事になってるんじゃないか?
「もっちろん!豪華なケーキなんて中々作る機会がないのよ?せっかくのチャンスをみすみす逃す手はないわよ」
「・・・・・・それは自分が食べたいって事かな?」
「あったりー!もう今からどんなのを作ろうかって、ワクワクしてるんだから」
「わー、楽しみー。ミキ、チョー期待しちゃうよ」
「まっかせて!」
どうやら余計な心配だったようだ。
なにより作ってくれる春香が一番楽しみにしてるみたいだし、このまま頼んでしまうのが一番いいみたいだ。
「じゃあケーキはまた日を改めて、と言うことで。それでいいな?美希」
「うん、もちろん」
流石に素直に納得してくれた。
食べ物の力は偉大だ。
「それじゃ、またね」
「うん、まったねー」
「また月曜に、学校で」

「春香って素敵だよね」
帰り道、美希が言った。
「たくさん話して、一緒に歌って、たくさん笑って。すっごく楽しかった」
「そうだな。あの笑顔は、見てると無条件に楽しくなるんだよな」
表情は豊かで、反応も面白くて、思い出すと必ず笑顔の春香。
ただそこにいるだけで、その場の空気まで明るくなる笑顔。
「いーなぁ」
「?なにが」
「だって高志クンは春香と一緒のクラスだから、月曜にまた会えるんでしょ?」
「それを言ったら、美希だってやよいちゃんや水瀬さんみたいに素敵な友達がいるじゃないか」
「・・・そっか。そーだよね。別に高志クンだけが特別な友達がいるわけじゃないんだよね」
「そう言うこと。それに次の約束は、俺じゃなくて美希としたんじゃないか」
「そーだったね」
えへへーっと笑う美希。
同じ笑顔でも、春香のそれとは全くイメージが違う。
見てるとホッとする笑顔。
「俺の友達のはずなのに、俺よりも仲良くなるんだもんなぁ」
「ゴメンねー」
「謝る必要なんてないさ」
そう言って俺は美希の頭を軽く撫でる。
「春香と仲良くなってくれて、嬉しかったよ」
「ありがと。これからもずっと仲良しでいたいな」
大丈夫だよ。
そう言おうとして、でも声にならなかった。
嬉しそうな顔で空を見上げる美希の横顔に、見とれてしまった。
美希の視線に釣られるように、俺も空を見上げる。
夕闇に光る一番星がやけに綺麗に見えた。
スポンサーサイト

● COMMENT FORM ●


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://yota323.blog63.fc2.com/tb.php/51-2fefb846
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

NEW ENTRY «  | BLOG TOP |  » OLD ENTRY

プロフィール

よた

Author:よた
色々と残念な親父です。

でも人生楽しんでます。

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (5)
ご挨拶 (9)
SS (16)
ニコマス (125)
ニコニコ動画 (17)
はるるん (30)
雑記 (28)
携帯 (2)
美希 (27)
iM@S SP (2)
VOCALOID (34)
ネタ (3)
雪歩 (9)
MikuMikuDance (45)
写真 (10)
JAXA (13)
UTAU (4)
アイマス2 (5)
重音テト (2)

フリーエリア


My List
by yota39

FC2カウンター

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。