観葉植物
与太郎の妄想独り言

2017-10

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うつくしいかおり、のぞむはる その6

4月第2週 その1?5

弁当をつつきながら、一通り自己紹介を済ませたところで時雨が切り出した。
「しかしこうなると例の席替えも、最初はどうなるかと思ったけど案外悪くはなかったって思えるな」
それを聞いてみんな一斉にあの時のことを喋りだした。
例の席替えとは、入学式直後の教室での事だった。


「私が学級担任の高木順一朗だ。これから一年間よろしく。
 さて、本来ならここで諸君に自己紹介をしてもらうところなのだが、今日は先に席替えをしてしまおうと思う」
そう言って先生は黒板に大きな紙を貼り出した。
そこに書かれていたのは、線の数こそ少なかったけど『あみだくじ』だった。
上には既に全員の名前が書いてあって、下は折り曲げられて見えないようにされている。
そしてもう一枚、番号が書かれた席の見取り図を貼り出す。
「一人一本ずつ、線を書き入れてくれたまえ。これなら全員公平に席替えができるだろう」
前代未聞と言うか、型破りと言うか、こんな席替え見たことが無い。
確かに下手なくじ引きと違って、全員に平等にチャンスがあると言えばその通りだけど。
線を書き入れたときに、毎年こんなやり方をしてるのか聞いてみたら、
「いや、これが初めてだ。ティン!ときてね」
などとのたまわれた。
最初は出席番号順に並んで座ってることがほとんどだから、全員席の位置の予想が付いてつまらないだろうと先生は言っていた。
その結果が今の席順だ。
「あれには驚ろいたけど、おかげでこんなかわいい女の子と仲良くなれたんだからな。それも三人も」
コイツの言う事には概ね同意できるけど、納得はできない。
「おいこら、俺たちのことはガン無視かよ」
「あぁ?何当たり前のこと言ってんだよ。お前たちのことなんてのは目の前の女の子の前には塵芥に等しいんだよ」
「だろうとは思ってたけど。なんたって教室でナンパかますような変態野郎だもんな」
「おい双海、それは俺のことを褒めてるってことでいいのか?いやぁ照れるなぁ」
「どこをどうしたら褒め言葉になるんだよ!」
まったく、からかってるつもりが逆にからかわれてるみたいで悔しい。
「そう言えば時雨クン、カメラやるって言ってたって事は写真部に入るつもりなの?」
俺たちのやり取りなんて意にも介さない様子で天海さんが質問をした。
これはこれで相手にされて無いようでちょっと寂しい。
「まあね。じゃなきゃ校内を大手を振ってカメラ持ち歩けないし」
「ふーん。今までの様子だと女の子の写真を撮りたいみたいに見えたけど、もしかして本当に変態なの?」
「ちょ、ちょっと春香・・・!」
あやうく口の中身を噴出しそうになる。
さすがに抑えたものの、盛大にむせ込んでしまった。
慌てて萩原さんがフォローに入ったが、当の天海さんはワケがわかっていないようだ。
「本人に面と向かって、その・・・、いくらなんでも失礼なんじゃ」
「えっ?だってさっき双海クンに変態って言われて、褒め言葉だって言ってたよね?」
「は、春香ってば!」
口の中身を無理矢理飲み込んだ。
我慢できずに笑い出す。
菊地さんも、進までも声をあげて笑い出した。
言われた時雨は、ガックリとうなだれている。
「まさか、女の子に面と向かって変態とか言われるとは・・・」
「おや、最高の褒め言葉じゃなかったのか、じあめ君?」
「なんだ、その『じあめ』ってのは!」
こんどは普通に返ってきた。
こうなるとからかいがいがあるってもの。
「校内をカメラ持って練り歩いて女の子の写真を取って回るような変態野郎なんか、『じあめ』で十分だ」
「テメェ、ちくしょう・・・!」
しかし、それ以上は何も言い返せないようだ。
「ねぇ雪歩、春香ってもしかして天然なの?」
菊池さんに聞かれて、萩原さんは困ったように答えている。
「う、うん、天然って言うかおっちょこちょいって言うか。
 とにかく言っちゃいけないこととか平気で言っちゃうの。いまの、その・・・、みたいに」
「え?わ、私何か言っちゃいけない事言っちゃったの?」
本当に分かってないところがまた、ある意味凄いと思う。
「女の子に変態呼ばわりされるのは、さすがにキツイな」
時雨のぼやきに、今度は進が止めを刺した。
「自業自得、だろ」
「・・・ちくしょう。そうだよ、女の子の写真を撮りたいんだよ!」
「それじゃ、本当の・・・」
「変態じゃない!」
女の子のツッコミにはさすがに軽口は叩けなかったようだ。
菊地さんの言葉を遮って、強く否定した。
「モデルカメラマンになりたいんだよ!将来的にはだけどな」
「なるほど。だから女の子を口説き落とすのが得意なのか」
「人聞きの悪い言い方すんなよ。確かに軽口は叩くけど、騙してるわけじゃないんだから」
俺の茶化した言い方に真面目な顔つきで答えた。
ここに来て時雨の口調が変わってきた。
それでもやはり聞いてみる。
「だって露出度高めの衣装できわどいカッコとか、させるんじゃないのか?」
「俺が撮りたいのはグラビアじゃなくて、ファッションモデルだ」
「それってどこが違うの?」
今度は萩原さんが聞いてきた。
「グラビアってやつは、モデルの女の子の魅力を撮るものなんだ。だからさっき双海が言ったみたいな写真になる。
 でもファッションモデルは身にまとう衣装の魅力を最大限に生かして写真に撮ってもらう人達のこと。
 だから衣装に負けない、それでいてでしゃばらないルックスとスタイルが必要なんだ。
 そんなファッションとモデルの魅力を余すところなく写真に収める、そんなカメラマンになりたいんだ」
「はぁ?。あんなナンパするから、もっとちゃらんぽらんな人かと思ってた」
菊池さんが心底感心した口ぶりで言う。
「ホントにね。人は見かけによらないって言うか」
「正直、ちょっとびっくりです」
天海さんと萩原さんも面食らった様子だ。
「それで?目の前の三人の中に、眼鏡に適う子はいるのか?」
「申し訳ない」
進の質問に、時雨は一つ深々と頭を下げてから言った。
「三人には悪いけど、一目見て気になってる子が一人いるんだ」
「それって、誰?」
「・・・・・・さっき、菊池さんが振られた子」
天海さんの質問に、すまなそうに答える時雨。
今度は菊池さんが素っ頓狂な声を上げた。
「チハヤが!?」
「あの子、チハヤって言うんだ」
「うん、如月千早。私と同じ中学で三年間ずっと一緒のクラスだったんだけど・・・・・・なんか意外って言うか」
「意外って?」
その言い方が気になって、思わず聞いてしまった。
「いや、あの。確かに背は高いけど、プロポーションはその、正直私よりも・・・」
それ以上は言わなくても分かった。
菊地さんはスポーツをやっているとは言え、背丈の大きく変わらない天海さんと比べて胸元の差は歴然だった。
その菊池さんが、自分の胸元に視線を落として言い淀めば。
「それは違うんだ」
突然、進が口を挟んできた。
なにより時雨が驚いた表情で、進のことを見ていた。
「スーパーモデルって聞いたことあるだろ。彼女たちって揃ってスレンダーなんだけど、なんでか分かるか?」
言われて見ればその通りだった。
興味の無い俺でも、パリコレなんかの映像は見たことぐらいある。
でも時雨以外誰も理由は分からない。
「世界の一流デザイナーのファッションデザインって奴は、みんなスレンダーなデザインだからさ。
 それは女性特有の起伏のある体形で着ると、バランスが崩れて美しく見えなくなるんだ。
 そのデザインを最も美しく見せることが出来るプロポーションがスレンダーボディで、モデルの憧れの体型なのさ。
 あの如月千早って子は最高のモデル体形を持ってる、だろ?」
「なんでそんなこと・・・」
時雨の方があっけに取られている。
「まぁ、ちょっとな」
「確かに高峰の言う通り、あの小顔・服を着てても分かるスラリと伸びた手足・スレンダーなプロポーションは
 まさに理想のモデル体型なんだ」
「まさか私に声をかけたのって・・」
「誓って言うけど、それは無い」
菊池さんが言いかけた言葉を、時雨はキッパリと否定した。
「タイミング的にそう思われても仕方ないのは分かってる。
 でも如月さんに近づくために菊地さんを利用しようとか、そんな馬鹿にするようなことは絶対にしない」
「・・・ごめん」
菊地さんは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「謝る事なんてないよ。」
「私、千早に時雨君のこと話してモデルのこと頼んでみるよ」
「ありがとう。でも菊池さんが友達になってくれたからきっかけは出来たし、自分でやりたいんだ。それが俺のやり方だし」
菊地さんの申し出を断る事無く、あっさりとかわす時雨。
写真と言うかカメラに対する真剣さが伝わってくるようだ。
「でも、大丈夫かな」
そんな時雨を見ながら、菊地さんはボソリと呟いた。
「ま、女の子と仲良くなる事ならまかせてよ。そこは実践して見せたろ?」
「そんな簡単じゃないんだ」
軽口に戻った時雨に対して、今度は菊池さんが真面目な口調になった。
「千早って、他人と係わりたがらないんだ」
「それって付き合いベタとか、引っ込み思案とか?」
「ううん、もっと根本的に他人を拒絶してるって感じ」
天海さんの問いに返ってきた答えは、にわかには信じられないものだった。
だから俺は菊地さんにきいてみた。
「他人を拒絶って、だってさっき菊地さんと喋ってたじゃ・・・」
「あれは私が勝手に話しかけてただけ。千早はまともに相手もしてくれて無いんだ」
「・・・・・・ずっとそうなのか?」
今度は進が訊ねた。
「うん。私は中学からしか知らないけど、どうも小学生の頃からそうだったらしいんだ。だから誰も理由も分からなくて」
俺と進は顔を見合わせた。
菊地さんと如月さんの間柄は、俺と進のそれとある意味似てはいるけど、全く違う物だった。
確かに進も昔は、他人を拒絶するようなそぶりを見せてはいた。
でもそれはあくまで人付き合いの下手さから来る反動のようなもので、他人との関わり自体を拒絶していた訳じゃない。
その事はつっけんどんながらも、こうして人の輪の中に居るのが何よりの証拠だ。
進自身も自覚はあって、それなりに自分から人と係わりを持つように努力はしている。
それがなにより自分自身のためになる事に気が付いたからだが。
「自分から誰かと係わりを持とうとすることってないのかな」
萩原さんが誰に聞くとも無く呟いた。
「たった一つだけだけど、あるんだ」
その一言に、全員の目が菊地さんに向いた。
「歌。歌を歌うことにもの凄く拘ってて、それで中学じゃ合唱部に入ってた。」
「なんだ。じゃあ別に人が嫌いとか言うわけでも無いんだ」
時雨が安心したように言うと、菊地は続けた。
「いや、そこでもやっぱり部員達とは衝突するばかりで、打ち解けようとはしてなかったみたい」
「なんで?だって合唱部に入ったって事は、みんなと歌を歌いたいからでしょ?」
「歌を歌える場所が欲しかっただけで、『誰かと』じゃなかったみたい」
「そんな・・・」
天海さんの問いかけに、菊地さんは辛そうに答えた。
「それでも誰かと係わりを持てるならと思ってたんだけど、一年の頃にはすでに歌の技術も知識も部長より上で
 先輩だろうが顧問の先生だろうがお構い無しに噛み付いてたのよ。そんな事も分からないのとか、こんな事も出来ないのとか」
ここまで来ると、もう言葉にならない。
そこまで徹底する理由はなんだろう?
時雨はさっきからずっと俯いたままだ。
「そうか・・・」
時雨が呟いた。
「・・・・・・困難はでかいほど攻略し甲斐があるってもんだ」
へ?
「燃えてきたぜぇ!ぜってぇ仲良くなって見せる!」
「時雨君?」
菊地が不安げに時雨を見る。
「もしこれで俺が如月さんと仲良くなれたら、俺が菊地さんを差し置いて友達一号って事だろ?やってやるぜぇ!」
なんてポジティブな思考の持ち主だろう。
でも確かに何もしないで諦めてられないか。
「そうよね。よ?し私も時雨クンに負けないで如月さんと友達なれるように頑張るぞ!」
「よし、いっちょやってみようか」
「・・・俺は高みの見物としゃれ込ませてもらうよ」
「そう言いながら、フォローだけは忘れないんだろ?」
「勝手に決め付けるなよ」
「あの?、私にも何か出来ることがあったら、遠慮なく言ってくださいね」
「みんな・・・」
みんなの反応に感動でもしたのか、菊地さんが涙目になっている。
すかさず時雨が菊地に話を振る。
「と言う訳で菊地さんには如月さんの事をもっと教えて貰いたいんで、明日以降も昼飯は一緒してもらうんでヨロシク!」
「モチロン!任せといて!」
菊地さんが元気に応えた。
明日以降も昼飯はこのメンバーと一緒に食べることになった。
新生活のスタートとしては上々だと思う。
本当に高木先生のあみだくじ様々だと思ってしまった。
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