観葉植物
与太郎の妄想独り言

2017-06

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うつくしいかおり、のぞむはる その5

4月第2週 その1?4

「おまたせしました?!」
おどけながら両手のパンと牛乳を顔の横に掲げて時雨が戻って来た。
「お待たせって言うほどかよ、って言うかはやくね?」
「だって女の子からのお誘いだぞ?待たせるなんて失礼だろ」
確かにそれはそうだが、ものの3分で戻ってくるってのもどうよ。
「時雨クン戻って来たね。ホラおいでって!」
天海さんがそう言いながら手を引っ張って来たのは、進の向こう隣の席の子だった。
進と話す時には必ず視界に入ってる筈なのに、何故か印象に無い。


「春香、そんな急に言われても・・・」
「急じゃないでしょ?朝のうちにちゃんと話したじゃない」
「そうだけど、でも」
「入学早々これだけ友達に恵まれるチャンスなんてないでしょ!?」
「それは・・・」
「ホラ、自己紹介しなさい!」
「きゃぁっ!」
背中を押されて俺たちの目の前に出てきたその子は、良く見ると可愛らしい子だった。
背丈は天海さんよりちょっと低いくらいか?
肩の辺りで綺麗に切りそろえた髪を揺らして恥ずかしそうにしながら、それでも自己紹介をしてくれた。
「あ、あの・・・は萩原、ユキホ、ですぅ・・・・・・」
最後の方は消え入りそうだった。
印象が薄いのは、その消極的な性格のせいなんだろう。
天海さんが横に並ぶと、見た目以上に小柄に見えてくる。
「まったく。そんなだから中学でも友達少なかったんでしょ?」
「だ、だってぇ」
「高校に入ったら変わりたいって言ってたじゃない」
何だか今にも泣き出しそうな雰囲気だ。

2・3時限間の移動時間に、俺達は天海さんから昼食会に誘われた。
せっかく知り合ったんだから、もっとお話をして仲良くなりたいからと言って。
時雨が真っ先にOKしたのはもちろん、俺も断るわけはなかった。
知らないもの同士、話をするのが相手を理解するのに一番なのは、時雨が言った通りだと思う。
とはいえ別にもう一人、友人を紹介するというサプライズがあるとは思ってなかったけど。

「しょうがないわねぇ」
天海さんの呆れたと言わんばかりのセリフ。
そんな会話を聞きながら、実はさっきから左手の女の子二人組みが目の端に入り込んでいて気になっていた。
ショートヘアの子がロングヘアの子に話しかけているらしい。
身振りをまじえて話すショートの子に対して冷静に返すロングの子、と言った感じだ。
二人共向こうを向いて喋っていて、内容までは聞き取れない。
しかしロングの子の声は分かる。
透きとおった、それでいて力強い綺麗な声だ。
さほど大きな声で喋っているわけでも無いのに聞こえてくる声が、気になる原因だった。
ぱっと見て、ショートの子が空回ってるように見える。
「一応私からも紹介するわ。萩原ユキホ、私の中学からの友達なの。
 見ての通りひどい引っ込み思案だから友達少ないのよ。高校入ったら友達たくさん作りたい!なんて言ってたんだけどねぇ」
「ふ?ん。ねぇ萩原さん、ユキホってどんな字を書くの?」
萩原さんに質問した時雨の口調は、とても優しかった。
なにキャラ作ってんだ!と突っ込もうかと思ったが、どうやらそういうわけでも無いようだ。
・・・左手ではショートの子がヒートアップしてきたらしい。
身振りがそれと分かるほどに大きくなっている。
「その、『雪』に『歩』く、です」
正直一番敬遠されると思っていた時雨からの質問に、萩原さんは特に警戒することもなく素直に答えた。
「なるほど、それでか」
「えっ?」
驚いた様子の萩原さんに、時雨は優しい笑顔で話しかける。
「『雪を歩く』んじゃ足元を確かめながらになるから、一歩ずつがゆっくりになるよね」
「あ・・・」
「大丈夫。俺達は何も慌ててなんかいないから、ゆっくり来たらいいよ。ちゃんと待ってるからさ。」
「・・・は、はい」
驚くほど器用な奴だ。
ちゃんとその女の子に合わせて対応を変えてやがる。
これはまね出来そうにない。
おかげで萩原さんの体から力が抜けて、リラックスしたのがはっきりと分かる。
「ね、言った通りでしょ?あとの二人も、いい人なんだから」
天海さんのフォローに続いて、俺も萩原さんに話しかける。
「いい人かどうかなんて分かんないけど、俺も時雨と一緒に待ってるよ。」
「ま、俺も慌てる理由は無い」
進も同じ様に思ったみたいだが、その言い方は素っ気ない。
「だったら待ってるって言ってあげればいいだろ?」
「そう言ってるんだけど?」
「言い方が素直じゃないんだよ」
そう言って頭を振った瞬間、左手の二人がまた目の端に映った。
ちょうどロングの子が席を立って教室を出て行くところだった。
ショートの子は肩を落とした。
時雨がいいタイミングで仲裁に入ってきた。
「お前達、萩原さんが怯えるからその辺にしとけって」
「大丈夫よ、ね!」
「・・・うん」
萩原さんは恥ずかしそうにニコッと笑って頷いた。
「さぁ、それじゃお弁当にしましょうよ」
「あ、天海さん、悪いけどちょっとだけ待ってもらえるかな?」
時雨はそう言うが早いか、突然立ち上がった。
「ヘーイ!そこのショートヘアのカワイイ彼女!!」
はいっ!?
まさに唐突に、さっきから俺の視界に入っていたショートヘアの子に声をかける時雨。
声を掛けられた子もいきなりの事に驚いて、恐る恐るこっちを振り向く。
「今の、『ショート』の『カワイイ』って、私のこと?」
「もちろん!う?ん、そのキリッとした目元にボーイッシュなショートヘアが似合っててキュートだね」
「き、キュート!?」
「今友達に振られちゃったみたいだけど、どうだい、良かったら俺達と一緒にランチしない?」
なんてこった、いきなりナンパを始めやがった。
変態かコイツ!?
ついさっきの萩原さんに見せた優しい雰囲気なんて、もうどこにも無い。
おまけに、なんだその野暮ったいイケメンポーズの見え切りは!
あまりの豹変振りに誰もついて行けず、あっけに取られてしまっている。
「アハッ!アハハハハハハハハハハハハハハ!」
その子はひとしきり笑うと、俺たちに聞いてきた。
「私も入れてもらって、いいの?」
「そりゃモチロン!メシは一人で食うよりみんなで食ったほうが美味いだろ、な?」
時雨が同意を求めてきた。
その誘い方はどうかと思うが、こいつの強引さには慣れるしかなさそうだ。
進は何も言わないから問題ない。否定はしても肯定はしないやつだ。
天海さんは萩原さんと顔を見合わせてから、その子に向かって笑顔でこう言った。
「もちろん」
「歓迎するよ」
俺が後に続いた。
「ありがとう」
「よっしゃぁ、決まりっ!!」
妙な雄たけびを上げて、ガッツポーズを取っている時雨。
これから先、コイツには苦労をさせられそうだ。

「それにしてもビックリしたよ。ナンパなんてされたの生まれて初めてだったから」
席を移動しながらその子は言った。
「おまけに『カワイイ』だの『キュート』だのって。そんなこと今まで言われた事も無いし」
「へぇそうなんだ。でも俺、思ってもいないことは言えないんだけどなぁ」
「うん。私も時雨クンが言った通りだと思うな」
しれっと言う時雨に、天海さんが素直に同意する。
「えっ?いや、そんな、照れるなぁ・・・うれしいけど」
「あのー、ところで自己紹介は・・・」
萩原さんから提案が出た。
そう言えばお互い、まだ名前も知らなかった。
時雨のインパクトの強さに、すっかり当てられている。
「あぁそうだね、それじゃまず私から・・・」
「いえ、あの、それもそうですけど・・・」
「「「「「?」」」」」
「あの、みんなの事も春香から聞いただけで、まだなにも知らないんだけど・・・」
「あっ、忘れてた!お弁当食べながら自己紹介してもらうつもりだったんだっけ!」
天海さんは困ったように頭を抱えた。
リアクションも含めて表情が豊かだなと改めて思う。
ほんと、見ていて楽しい人だ。
「そう言えば、そうだったな」
普段は簡単には動じない進まで、すっかり忘れていたようだ。
「それじゃ改めて、私から自己紹介させてもらおうかな」
そう言うとおもむろに自己紹介をはじめた。
「名前は菊地マコト、中学じゃ陸上で短距離やってたから足には結構自信あるんだ」
「へぇ?。ねぇ、名前のマコトってどんな字を使うの?やっぱり『真』に『琴』とか」
聞いたのは天海さんだったけど、みんな同じようなことを考えてたと思う。
「いや、『真』の一文字なんだ」
しかし返ってきた答えは、誰も考えていなかった。
思わず聞き返す天海さんの気持ちは分かる。
「えっ、一文字なの?」
「うん」
でも当たり前のように笑顔で応える菊地さん。
なんだか一瞬空気が重くなったような気がしたが、大して気にも留めずに俺が言った。
「へぇ、カッコいい名前だね」
直後、肩口辺りを時雨に引っ叩かれた。
「いってえな」
「お前少しは空気読めないのかよ!」
そんなに怒るか?
俺は菊地さんに似合った、いい名前だと思って言ったんだけど。
「アハハハハハハハ」
菊地さんに笑われた。
でもこんな気持ちのいい笑い方をする人だと、笑われるのも悪くない。
「ありがとう。男の子っぽい名前だから、気を使ってくれたんだね」
「いや、そんなつもりじゃ・・・」
「あ、否定しきれないってことはやっぱりそうなんだ?」
時雨の反応に突っ込みを入れる菊地さん。
わざと意地悪な言い方をしている。
「さっき思って無いことは言えないって言ってたものね」
時雨は何も言えなくなっている。
だけど菊池さんが責めてるわけじゃないのは、火を見るよりも明らかだ。
「だけど、名前をカッコいいって言われるのは嬉しいんだ。私自身もこの名前好きだし」
「うん、私も素敵な名前だって思う」
萩原さんに同意されて、菊地さんは激しく照れている。
「ところで」
進が割って入ってきた。
「そろそろ飯食わないか?腹も減ったし、なにより時間がなくなるぞ」
言われて気がついた。
全員(進以外だが)まだ弁当も広げてなかった。

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