観葉植物
与太郎の妄想独り言

2017-08

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うつくしいかおり、のぞむはる その14

4月第4週 その1?2

放課後。
終礼が終わると、時雨は如月さんの席に飛んでいった。
しかし二言三言、声を掛けただけですぐに戻って来た。
「おい、もういいのか?何を話し掛けてたんだよ」
時雨に話し掛けながら如月さんのほうを見ると、珍しく時雨をじっと見ていた。
しかし俺の視線に気が付くと、プイッと向こうを向いて教室から出て行った。
「別に。ただ『お互い部活がんばろうな』って言ってきただけだよ」
言うが早いか、時雨は既に荷物を肩にかけている。
「そういや菊地さんは陸上部に入るんだろ?」
今にも教室から出て行く勢いで、菊地さんに声を掛ける時雨。
「え?あ、もちろん」
「じゃ、お互いがんばろうな!」
それだけ言うと、さっさと教室を後をした。





「時雨クン、なんだか随分気合入ってるね。」
「ホント、なんだか別人みたいだね」
春香が時雨を見送るように言うと、菊地さんが相槌を打った。
黙って見ていた進が、フォローするように話しかけた。
「それだけ本気で取り組んでるって事だろ。俺でも羨ましいと思うよ」
最後にチラリと俺を見た。
「進でもそう思うのか」
「私も、うらやましいなって、思っちゃった」
萩原さんも、視線を落としがちにそう言った。
それを聞いた春香が、萩原さんに話しかける。
「あら、雪歩にはポエムがあるじゃない」
「でも、時雨君の写真に対するほどには、本気で打ち込んでないから」
「俺もそうだな。」
萩原さんの言葉に、進が同調した。
「う?ん。私にはそう言うのが無いから、何とも言えないな」
フォローしたつもりが何も言えなくなって、春香も困っているようだ。
かと言って俺も同じようなものだし、フォローのしようも無い。
「別にいいじゃない」
そこへ菊地さんが助け舟を出してくれた。
「みんながみんな、時雨みたいに打ち込めるものを持たなきゃいけない訳じゃなし。私だって時雨ほどに打ち込んでるのかって聞かれたら、自信ないし」
「確かにそうだな」
進が菊地さんの言葉に乗ってきた。
「みんなが同じ事をできなきゃいけない、なんて事じゃないからな」
「そうそう、そう言うこと」
春香も同意する。
萩原さんに向かって話しかけようとした瞬間。
「まっことー!!」
元気な女の子の声が教室に響いた。
「響?」
「響ちゃん!?」
春香と菊地さんが同時に反応した。
「「「えっ?」」」
よく見ると、声こそ出してなかったけど萩原さんも反応していた。
「春香、響の事知ってるの?」
「うん。同じ中学出身で、一年のとき同じクラスだったから。真ちゃんは、どうして?」
「私は陸上で同じ短距離同士で、大会の度に競い合ってたから」
よく分からないけど、三人に共通の友達のようだ。
「おー春香に雪歩。はいさい!」
「響ちゃん、相変わらず元気ね」
「それが取り柄だからね。入学してからマトモに挨拶もしてなかったっけ?」
「入学式当日以来だよね」
「そっかー。ま、お互いがんばろうぜ。それよりも真。早く行こうぜ」
「あぁ、今片付け終わったところだから」
「片付けなんて適当でもなんくるないさー!ほら、行くよ」
「分かったから、そんなに引っ張らないでよ。みんな、じゃぁね」
それだけ言うと、慌ただしく教室から出て行ってしまった。
「なんだか、随分と元気な人だね」
あっけにとられながら、春香に話しかけた。
「うん。本人も言ってたけど、響ちゃんはあの元気がいいのよ」
類は友を呼ぶって奴なのかな。
春香の周りには元気な人が集まってくるみたいだ。
「ところで、高志クンたちは部活はやらないの?」
春香が俺と進を見ながら聞いてきた。
「あぁ、俺は特にやりたいモノも無いしね」
「部活なんかより、時間をかけたい物があるからな」
「じゃあ、私達と同じなんだ」
少し萩原さんに視線を向けて、春香が答えた。
「ねぇ、もし良かったら四人でちょっとお茶でもしていかない?」
「お茶?それってもしかして隣?」
春香の誘いに思い当たったから聞き返してみる。
「もっちろん。先週初めて入ってみたけど、結構充実してるのね」
「この近辺じゃ一番だろうね。ただ古いのがネックだけど」
「そぉ?結構綺麗な感じがしたんだけど」
「それじゃ、その辺を確かめるためにも行ってみようか」
そう言って進に視線を向ける。
案の定渋い顔をしていた。
「俺はいいよ」
「つれない事言うなよ、たまには付き合ってみろって。
人間ウォッチングするだけでも、お前の書き物のネタになるかもしれないだろ?」
ダメもとで誘ってみる。
こういった誘いに、進は乗ってきたことが無い。
一度強引に連れて行ったことがあったけど、場の空気を壊しまくりで酷い目にあった。
ところが、
「…そうだな。実際壁に当たってもいるし、少し周りに目を向けた方が良いのかもな」
と言って誘いに乗ってきた。
「決まりね!それじゃ早速行きましょ」
春香の言葉を合図に、俺達四人は連れ立って玄関へ向かった。

俺達が向かったのは学校と建物ひとつ挟んで隣接する、ショッピングモールだ。
ちょっと前なら、大型スーパーとか言われていたけど。
俺が隣と言ったのは、数年前まで学校との間が空き地だったからだ。
感覚的に隣というイメージが染み付いてしまっている。
「高志クンが言うほど古くは見えないんだけど」
春香は店の中を見回しながら、不思議そうに聞いてきた。
「改装されてからまだ何年も経ってないからね。でも建物自体は、俺達よりも年上のはずだよ」
「えっ!そんなに?」
手にしたトレーをひっくり返しそうな勢いで驚いている。
「確かに、物心がついた頃にはもうあったからな」
適当な所を陣取ると、進が相槌を打った。
俺達も手にしたトレーをテーブルに置いて、椅子に腰を下ろす。
「ついでに言えば、改装前にはこんなコーナーも無かったしね」
「へぇ、じゃあお買い物だけのお店だったんだ」
「いや、レストランが3、4軒入ってたんだよ」
以前は食事をしようと思ったら、専門のレストランに入らなきゃならなかったけど。
今はこのスナックコーナーのお陰で、休憩だけでも使えるスペースになっている。
「ふ?ん。じゃあこうやってお茶だけって使い方って、できなかったんだ」
「そうだね。おまけを言えば、このスタイルになって店の種類も増えたし、使い勝手はすごく良くなってると思うよ」
アイスクリームやハンバーガーなんかの軽食から、ラーメン・丼物なんかのしっかり食事になるものまで。
専門のテナントが並んでるから、結構選びがいもあったりする。
今日選んだドーナツショップはホットコーヒーがおかわりできるので、この時間帯は学生ご用達になっている。
「それにしても、相変わらず甘い物は口にしないんだな」
落ち着いたところで、進のことを茶化してみた。
俺と春香、萩原さんの三人はドーナツとコーヒーのセットを頼んだけど、進はコーヒーのみだ。
「たまにはつまんでみたらどうだ?甘い物は頭を活性化するとか言われてたような気もするけど」
「無理に口にしたって、ストレスになるだけだ。食わなきゃ死ぬ訳でもあるまいし」
「確かに」
「高峰クンって、甘い物が嫌いなの?」
春香の疑問はもっともだろう。
「別に嫌いって訳でもない。わざわざ選んでまで食う気になれないだけだ」
そんな疑問に、あっさりと答える進。
それを見ていた俺に、今度は進が聞いてきた。
「何をそんな不思議そうに見てるんだ?」
「そりゃそうだろ。普段は誘っても断るやつが進んで追いて来た上に、嫌がるでもなく質問に答えてるんだからな。いったいどういう風の吹き回しだ?」
以前の進からは考えられない反応だ。
ところが進は、こともなげに答えた。
「あぁ、大した事じゃない。俺は聞きたい事があったから、付き合っただけだからな」
「聞きたい事?」
そう言うと、春香と萩原さんに向かって話し始めた。
「さっき菊地を迎えに来た子のことだ」
「響ちゃんのこと?」
「響っていったっけ。あの子不思議な言葉を使ってたようだけど、何か知ってるか?」
「言われてみりゃ、変わった言葉を使ってたような…」
あの元気なイメージが強くて、どんな言葉を使ってたかまでは思い出せない。
「『はいさい』と『なんくるないさ』でしょ?」
「そう、それだ」
ニコニコと笑顔で話す春香に、身を乗り出す勢いで反応する進。
「もしかして方言なのか?」
「そう、響ちゃんは沖縄出身なんだって」
「沖縄!?」
今度は俺が反応してしまった。
そんな俺達を面白がるように、それでもちゃんと説明してくれる春香だった。
「そうなの、だから苗字も凄く変わってるんだよ。『がなは』って言うの」
「がな、は?」
思わず聞き返してしまった。
「そう。『我那覇』って書くの。珍しいでしょ」
「なるほど、ウチナーグチか。それなら納得だ」
「ウチ…なんだって?」
今度は進に向かって聞き返す。
あきれた様に、それでも教えてくれた。
「『ウチナーグチ』。沖縄の方言の事だ」
「流石は高峰クン、ウチナーグチって解るんだ」
「まぁな。ただ聞きなれないから、流石にすぐには分からなかったけどな」
「そんなものなのか?俺にはさっぱり分からないんだけど」
「ウチナーグチはまた特殊な方言だからな。あの独特の音の響きは、言語っていうほうが正しいかもしれない」
「例えば、『アイヌ語』とか?」
「確かにそれが一番近いかもしれないな。正確にはちょっと違う気もするけど」
進がここまで饒舌になるなんて、よほどあの言葉が気になるらしい。
そのまま春香に質問を続けるほどだ。
「で、二人はあの子と知り合いなんだな」
「そう。真ちゃんにも言ったけど、同じ中学出身で一年の時にクラスメートだったの」
「じゃあ頼めば話くらいは聞かせてもらえるんだな」
「それはもちろん。でも、高峰クンの期待には応えられないと思うけど」
含みのある笑顔で、春香が答える。
「どういう意味だ?」
流石に進が聞き返した。
「高峰クンが聞きたいことって、ウチナーグチの事なんでしょ?」
「あぁ、そうだ」
「でも響ちゃんね、ウチナーグチはほとんど覚えてないんだって」
「そうなのか?」
「うん。響ちゃんがこっちに来たのって、小学校に上がる直前なんだって。だからこっちでの生活の方が長いから、向こうの言葉はほとんど使ってないから憶えてないんだって」
「そうか。でも、両親はどうなんだ?親が元々沖縄の人間なら、親の影響で少しくらいは知ってるんじゃないのか?」
「それもダメなんだって」
「どうしてだ?」
「響ちゃんのご両親って、元々あんまりウチナーグチは使ってなかったんだって」
「何故?多少は使ってるもんじゃないのか」
あの進が随分食い下がって聞いているのは、よっぽどあの言葉に引かれたって事なんだろうけど。
それにしても、ここまで必死に食い下がっているのは見たことがない。
「だって、私達の両親もそうじゃない?」
「なに?」
「私達の親だって、今時方言なんかほとんど使ってないじゃない」
「あ・・・」
「そう言うことみたいなの」
「なるほど。言われてみればその通りか・・・」
よっぽど残念だったんだろう。
進はものすごくガッカリとしていた。
そんな進に気を取られていて、春香の隣でクスクスと笑っている萩原さんに気がつかなかった。
「・・・・・・何がそんなにおかしいんだ?」
進はかなりムッとした様子で、萩原さんに聞いた。
でも物怖じすることなく、萩原さんは答えた。
「ごめんなさい。でも、ちょっと思い出しちゃって」
「思い出したって、何をだ?」
「三年前の、私のこと」
進に向かって、笑顔でそう答える萩原さん。
「?」
「さっき春香が言った通り、三年前に響ちゃんと同じクラスになった時に、あの『はいさい』と『なんくるないさ』を、初めて聞いたの。あの時の私も同じような質問をして、今みたいな答えが返って来て。今の高峰君みたいに、ものすごくガッカリしちゃったなって。今の高峰君と春香のやり取りを見てて、あの時の事を思い出しちゃったから」
「なんだ、そういうことか」
「別に、馬鹿にして笑ってたつもりじゃ、なかったんだけど。やっぱり、気を悪くしちゃったかな?」
「いや。まぁ最初は確かに笑われてるのかと思ったけど、理由が分かれば別になんて事はない」
「でも、高峰君は流石だね」
「?何がだ」
「あの時の私、ウチナーグチって名前、知らなかったもん。それがさらっと出てくるんだから」
「三年前って事は中一の時だろ。知ってるほうがどうかしてるんだよ」
「それだけ、勉強してるって事でしょ?私なんか、まだまだなんだなって思っちゃった」
「別に勉強なんかしてるつもりは、無いんだけどな」
「だって、調べなかったら、憶えられない事じゃ・・・」
「気になったり、目に付いたりしたものは、無理に勉強なんかしなくても気がついたら憶えてるもんだけどな」
「そう言うものかな」
「俺にとっては、な。かえって勉強なんかしたほうが、なかなか憶えられなくて苦労してるよ」
「高峰君でも、やっぱり苦労したりするんだ」
「当たり前だろ。苦労しなくて済むなら、とっくに作品の2・3本くらい仕上げてるよ」
「それもそうだね」
「ねぇ雪歩、私コーヒーのおかわりもらって来るけど、雪歩もいる?」
進と萩原さんの会話を笑顔で聞いていた春香が、萩原さんに声を掛けた。
「えっ?あ、そうだね。私ももらってこようかな」
「私が一緒にもらってきてあげるから、雪歩は座ってて」
「え?でも・・・」
「いいから、いいから♪」
だから、俺も進に聞いてみた。
「ついでだから、俺ももらってくるかな。進はどうする?おかわり、いるか」
「あぁ。もらってくるか」
「いいよ、俺がついでにもらってくるから。みんなで揃ってぞろぞろと行くこともないだろ?荷物番、よろしく」
「そうか。じゃあ頼む」
「了解」
そして俺は春香と一緒に、カウンターまでおかわりをもらいに席を立った。
席から少しはなれたところで、春香が聞いてきた。
「ねぇ、やっぱり高峰クンもあんなに楽しそうにお話しするのって、珍しいことなの?」
「じゃあ、やっぱり萩原さんもそうなんだ」
「あんなに楽しそうに男の子と話してる雪歩、今まで見たことなかったから」
席に残っている二人をちらりと見る春香。
つられて見てみると、さっきと変わらず話をしている二人が見えた。
「あの進が、女の子と話をする姿を見ることになるとはなぁ」
「いいじゃない。どっちにとっても悪い事じゃないでしょ?」
「悪いどころか、大歓迎の状況なんだけど」
カウンターでおかわりをもらって、春香と二人、席に向かう。
「それじゃ、これからもたまにはこう言う機会を作らなくちゃね」
「でもあんまりこまめにやると、進に逃げられそうだからな。適度に時間を置いてね」
「それは雪歩も同じ。ちょうどゴールデンウィークも挟むから、次は再来週くらいかな」
「うん、いいところじゃないかな」
「ところで、高志クンはゴールデンウィークは、何か予定とかないの?」
「え?まぁ特にはないかな。」
「特には?」
「あぁ。別に出掛けるとかって意味じゃなければ・・・・・・」
そんな他愛も無い会話をしながら、席に戻った。
それから、このお茶会が定番になるまでに、それほどの時間は必要なかった。

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